ここに来るのは君がいなくなってから何度目だろう。
もうほとんどの木にさくらのつぼみがつき始めている。
このつぼみが開花したのを君と最後に見たのは、もう10年も前なのか。
10年間君は、ずっと俺の心の中にいた。
今もまだ、消えることはない。
これから先、ずっと。

びゅっと強い風が吹いた。
そうだ、あの日もこうやって強い風が吹いて、さくらの花びらが舞う中で君がこういったんだ。
初めてここのさくら一緒に見た相手が拓海でよかった、って。
君と初めてキスをした日。

初めて君に想いを伝えたのも、このさくらの木の下だった。

君と最後にあったのもこの場所。

俺は墓に置いてきたのと同じ花を,さくらの木の下に置いた。
君が好きだったすみれの花。
そばに落ちていたさくらの木の枝も横に添えた。
こぼれ落ちる涙を拭い、俺は丘から街を見下ろした。
君と何十回も見た景色。君がいないだけでこんなに景色が変わって見えるんだと感じたのは、一体何回目だろうか。

来年も再来年もその次の年もまた、君の命日に、こうやって俺はここにくるのだろう。
そして君を想い、涙を流すのだろう。

本当にそれでいいのだろうか。
君はそんなことを、望んでいるのだろうか。

また強い風が吹いた。
風の中、思い出す。
君がいた日々を。君と過ごした3年間を。