私は帰宅するとき、開けた通りを通る。

家は割と大通りに位置しているし、何よりも母が細い路地を通って帰るのを心配してくるからである。そのため、少し遠回りになっても、大通りを通るようにしていたのだが…

「ねぇ、シカトしないでよ~」

しつこく質の悪いナンパにあってしまった…
今日は頗る運が悪いようだ。こういうナンパはシカトに尽きる。

そう思って、男の前をスルーして通り過ぎようとしたのだが

「シカトすんなってば!」

乱暴に手首を捕まれ、細い路地の方へ連れ込まれてしまった。

その男の瞳は、彼とは違い汚く淀んでいるような気がした。私はこの男に恐怖というより、苛立ちを覚えていた。

『何ですか?私、帰る途中なんです。』

自分でも思うが、私は女子らしくないと思う。
普通の女子ならここで、悲鳴の一つでもあげてみせるだろう...

「え〜?それはできないなぁ...」

そういって見てくる男の目の色が突然変わった。
男は私を路地の壁に追いやり、そして、顔を近づけてきた。

『っ!』

流石に成人男性の力には敵わない。
等々、恐怖が募り、諦めかけ、唇が触れそうになったその時。

「おい!てめぇ、何してやがる!」