「えへへ。雪に会いたくて、待ってたんだ」

少し照れくさそうに、そう言った彼の言葉に、私の心から恐怖という感情が消える。
と同時になぜか私も少し恥ずかしくなってしまった。

『あ、ありがとう』

「どういたしまして。それでさ、今家に上がっても大丈夫かな?」

私の家は、共働きなので、基本的には、家でひとりである。

『大丈夫だけど…どうしたの?』

「ちょっとね…」

言葉を濁した彼に、少し違和感を覚えながらも、私は彼を家にいれた。
やはり、家というものは、安心する。入った瞬間に見る。見慣れた光景は一日の疲れを癒してくれる。

「お邪魔します」

そこに、いつもはいない彼の存在があるのだけれど…
そういえば、家に異性をあげたことがなかったなと思うと、安心していた気持ちが、次第に緊張に変わっていった。

『お、お茶を入れるね』

「あ、お構いなく。それよりこっちに来て」

彼に手招きされ、私は彼の方へ向かう。
彼は、座っていたソファから立ち上がり、私の前に来て
そこで、私の視界は、真っ暗になった。
いや、正確には、彼が私を抱きしめたのだ。

「ねぇ、今日。どうしてこんな時間まで、帰ってこなかったの?
どうして僕からのメールにも気づかないくらい、委員長楽しそうにしていたの?
君は僕のものだよね?じゃあ、僕以外の人と話す必要ないでしょ??」

それは、ヤキモチとかそんな可愛いものじゃない気がした。
先ほど感じた恐怖という感情がぶり返してくる。

『そ、それは…』

続ける言葉が見つからず、言い淀んでいると。
私の視界は彼の顔で埋め尽くされた。