愛の歌、あるいは僕だけの星



『もう、諦めませんか』
『いやだ。諦める事なんて出来ない。お願い、もう一度だけ』

 泣いて縋る彼を優しく撫でた女が、フードをそっとおろす。現れた顔を見て、桐生は大きく目を見開く。あんなにも恋い焦がれた彼女だったのだ。正確に言えば、彼女は彼女本体ではなく、彼に裏切られた痛みの化身。剥がれ落ちた恋心の欠片だという。

 過去に未来はない。やり直すのは、もう諦めましょう。けれど未来がどうなるかは、私にも誰にも分からない。長い間逃げていたけれど、そろそろ、私も自分の心に帰りたい。

 そうして、世界は淡い光に包まれる。