愛の歌、あるいは僕だけの星


「如月が、消えたと思った」

『……え?』

 ざわりと、夜風がふたりの間を吹き抜ける。

「それって、いいことだろ?俺も、ようやく厄介払いが出来たってことだし、如月だってこの世に未練がなくなったってことだし」

『はあ』

 いまいち、銀也が言いたいことが分からなくて、夏は思わず首を傾げる。

「でも、駄目だったんだよな」

 今まで、どこか真剣な面持ちで話をしていた銀也の顔から、ふと緊張が溶ける。そして、夏に向かってふわりと笑った。今まで、一度だって見たことがない表情。夏は、自分の顔が一瞬で赤くなるのが分かった。

「いつの間にかさ、家を飛び出してた」

『……藤原君』

「町の、端から端まで、見に行かなきゃ気が済まなかった」

 銀也は、こほっと照れ隠しに空咳をする。

「なんで、俺、こんな必死になってんだろうね」

 そう言いながら、小さく笑った。そんな銀也に、夏は何も言えなかった。彼女の雰囲気を察して、銀也は眉をしかめて言う。