「はいはい……、じゃあ、ここね。適当に印鑑押しといて」

「はあ!?アンタ、これ企画報告書じゃないですか!きちんと確実に、会長が目を通して押印してください!」

 ドがつくほど真面目な蒼井は、のらりくらりとかわそうとする銀也の逃げ道を必死に塞ごうとする。彼からは逃げられないと、ようやく観念した銀也は小さく息を吐いて、しぶしぶ蒼井から書類の束を受け取った。

 ここ、誠東学園はそもそも非常に変わった学校だ。

 文化祭、体育祭、修学旅行などの学園イベントを主に、部活動や委員会、あらゆる運営が生徒の自治に委ねられている。生徒で運営し、最終的な決定を教師に仰ぐ。この体制だけは、創立から今日まで変わっていない。
 
 だからこそ、その中核である生徒会の会長には重要な仕事が多いのだとこないだも蒼井に説教されたばかりだった。

『あんたねえ、蒼井君が可哀相じゃないの』

 腰に手を当てて、如月が窘めるように言う。全く、学校では話掛けるなと口を酸っぱくして言ったのに、彼女はすっかり忘れてしまっている。