″夏休みは避暑地へGO!~林間学校のお知らせ~"

 表紙に、お世辞にもセンスが良いとは言えないタイトルを太字フォントでタイピングされた企画書をめくりながら、銀也はふうと小さな溜息をついた。

 誠東学園は、約八割の生徒がエスカレーター式で高校から大学へ上がるため、高校三年という本来であれば受験勉強真っ只中の時期にこんな企画が用意されている。参加は強制ではないが、皆一様に楽しみにしているし、例え受験生であっても息抜きを兼ねて参加する生徒が殆どだ。

 二泊三日とはいえ、予算や宿泊設備、交通の手配などは生徒会と各委員長が中心となって行い、最終的に教師に承認をもらい決定となる。今手元にある資料は、大まかな概要について既に案が練られた状態で、後は教師への提出を行う段階まで来ていた。

「銀也君も、もちろん参加してくれるよね」

 嬉しそうにそう問われ、頷くほかない。ただでさえ、この企画を進める最も多忙であった週をまるっと休んでしまったのだ。さすがの銀也であっても、ここで面倒だから行きませんとは言えなかった。