「ごめん、いきなり休んで。仕事ほったらかしにした」
「いいんですよ、そんなことは」
「え、あ……、蒼井、どうしたんだ?」
てっきり、責められるとばかり思っていた銀也は、予想外の反応に戸惑いを隠せない。歩きながら言い訳を山ほど考えていた自分が、なんだか馬鹿みたいに思える。
「何か呑みませんか? 紅茶とコーヒー、どっちが好きです?」
「それじゃ、紅茶で。ていうか、いいよ、俺淹れる」
ポットに近づこうとするのを、蒼井が無言で制した。
「いいから、座っていてください」
渋々、革張りのソファに腰を掛けた。
ダージリンの上品な香りが、鼻孔をくすぐる。差し出されたカップを口につければ、どこかほっとした心地になる。
「なあ、俺が休んでた間の仕事なんだけど……」
「大丈夫ですよ。俺が出来ることまでは、やっておきましたから。後は、最終確認と会長の印鑑だけもらえればそれで」

