(……飲み込まれる)
そんな錯覚に陥る。
夏、早くきて。暗闇の中で、迷子。見つけて、はやく。
暗闇は仲間で、だからそれを恐れてなんていなかった。
むしろそれを望んでさえいた。けれど、波がそれを崩す。崩そうと迫る。崩した先には一体何があるんだろう。
『あたしも、怖いよ』
「夏も?」
『悲しいのも、苦しいのも、嫌だよ。傷つくのが怖い。けど……』
強い光のともった瞳。その双眸が、まっすぐに銀也を見つめる。
『それが、尊いものだって知ってる』
柔らかい黒髪が、夜風に揺れる。
それに触れてみたいと思った。

