夏は、不思議そうな顔をしている。
ゆっくりと息を吐く。わかるだろうか、夏に。この不可解なもの。
「心臓が、こんなにうるさいく鳴ることなんて、今までなかった」
『それって……』
「なんだと思う?」
ずっと聞けなかったこと。考えすぎてうまく眠れなくなってしまうくらい、不安で、苦しかった。
逃げようとした。気づかない振りをした。
けれどそれは許されなかった。心臓の鼓動は、大きく主張して、それから逃げることを許してはくれなかった。
「こころが、ざわめく」
ぎゅっとこみ上げる何かを押さえつけるように手のひらを握りしめた。情けない。馬鹿みたいに、身体が小刻みに震えていた。

