初夏の夜は少し暑くて、ゆっくりと部屋の窓を開けた。
今日は新月で、夜空に月の姿は見えない。さわさわと、夏のにおいをはらんだ風が吹き込んで気持ち良い。
結局、文句のひとつでも言ってやろうと思ってたのに、何も浮かばない。むしろ、何に対してそんなに不満があったのか曖昧でさえある。
『銀也』
夏が、銀也の名前を呼ぶ。たったそれだけで、どきりと心臓が大きく脈打った。
『ぼーっとして、大丈夫?もう休んだら?』
先ほどから人の心配ばかりをしてくる夏に、「平気」と微笑んで答えた。夏は、なんとも言えない表情を浮かべながら渋々頷く。

