「こっちよ」
夕飯をご馳走になった後、夏の母に和室へと案内された。
ゆっくりと襖が引かれる。
「……夏」
そこには、可愛らしい小物がたくさん置かれた仏壇があった。中央に置かれた写真には、満面の笑顔を浮かべる夏がいる。いつくらいの写真なのだろうか、髪が今よりも少し短い。
静かに膝をつき、振り返った。
「お線香、供えてもいいですか?」
「もちろん、そうしてあげて。夏も喜ぶわ」
ライターで火をつければ、独特の香りが漂う。そっと手を合わせて、けれど彼女に向けて掛けたいと思う言葉はない。伝えたいなら、彼女の部屋に戻って、直接言えばいいのだ。
「ゆっくり休んでね」
そう言って、リビングへと戻っていく夏の母に会釈をし、しばらくして銀也も夏のいる部屋へと向かった。

