そっと夏を伺えば、今にも泣き出しそうな、けれど必死に何かを堪えるような顔をしていた。ああ、そっか。
『なんで、そんな今にも死にそうな顔してんのよ』
「別に、ちょっと体調悪いだけで……。ごめん、心配掛けてる?」
『知らないよ。銀也のアホ』
シンと静まりかえった部屋。銀也も夏も、何も言わなかった。
コンコン、ノックの音に銀也の身体が固まる。
(そうだ、ここ……、夏の家だ。てことは……)
入ってきたのは夏の母親だった。
手には、代えのタオルと氷水のはいった洗面器を持っている。
「具合はどう?」
「えっと、大丈夫です。あの、俺……」
口ごもる銀也に、「なあに?」と首を傾げるその動作が、少し夏に似ていると思った。
「ご迷惑をおかけして、本当にすみませんでした」
「うちの玄関の前で倒れてたのよ。お節介だとは思ったんだけどね、夏に会いに来てくれたんでしょう」
「……え」
「あら、違った?」

