正直なところ、どうして死んでしまった自分がまだこの世界に残ってしまっているのか、夏にはちっとも分からなかった。

「いいな、学校では絶対に話しかけんなよ。もし話しかけてきたって、俺は全部無視するからな。無視されたからって何かしようとか考えんなよ」

 勝手に銀也の部屋へと居座ることに決めた翌朝、押し入れに腰掛けて朝の準備をしていた彼を眺めていた夏に、念を押すようにそういった。

『へいへい、わかったよ。別に無視されたからって呪ってやろうとか思ってませんよ』

 わかっているのかいないのか、適当な返事する夏に、銀也は一瞬ぎょっとしたような顔をするもすぐにぎろりと睨みつけた。小さく舌打ちをして、そのまま乱暴に鞄を肩に掛けて部屋を後にする。その背にそっと溜息をついた。

 "藤原銀也"

 夏が生前通っていた誠東学園高校の生徒会長をしている彼は、誰もが知る有名人だった。その場にいるだけで、雰囲気を華やかにするその隙のない美貌は一種の才能のようなものだ。