愛の歌、あるいは僕だけの星


  目的の場所は、銀也の住むアパートからそう遠くない場所にあった。
 木陰に立ち、辺りを見渡す。桜海町と名前がつくだけあって、桜の木がそこかしこに植えられおり、どれも青々とした葉を茂らせている。

「この辺り……、のはずなんだけど」

 番地を見て、仕方ないから近所の一軒家をひとつひとつ確認しながら歩いていく。七つ目の、茶色い煉瓦づくりの家。暑さで朦朧とする視界の中で、必死に目を凝らす。

「あ!」

 如月、とぶらさがっている真鍮のネームプレートに書かれた文字を見て上を見上げる。白いレースのカーテンが、開け放たれた窓からふわりふわりと揺れていた。

(来たはいいけど)

 夏は、おそらく中兄いるのだろう。けれど、どうやって会えばいいんだ?自分にしか見えない夏を訪問するのが、意外に難しいことにようやく気づく。どうしよう、どうしようと、普段より思考能力の下がった頭を賢明に働かせる。