愛の歌、あるいは僕だけの星


「や、知らない。本当に」

「誤魔化してんじゃねえよ。おまえ、なめてんのか!」

 なんと短気なことか、その骨ばった拳を勢いのままにつきあげるのを冷静に見つめる。

 パシッ――

 少しの遠慮もなく銀也を殴り飛ばそうとしたその拳が、届くことはない。正しく距離を測って、楽々と制した。

「悪いんだけど、その矢島の女の野々村茜?だっけ。全然知らない」

「嘘つくんじゃねえよ!おまえに誘われたって言ってたぞ」

「さすがに、やってもいないことで殴られてあげるほどお人好しじゃないから」

 そのまま受け止めた拳をつかみ、関節の逆方向へと捻ってやる。耐えきれない痛みに顔を青くした少年が、「ぎゃっ」と声を上げて地面へと倒れた。