愛の歌、あるいは僕だけの星


「ケンカの原因て、聞いてもいい?」

「……うん。むしろ、聞いてもらえると助かる。藤原なら、聞いてもすぐに忘れてくれそうだし」

 神谷が、茶化すように言って小さく笑った。

「私がね、自分の気持ちを誤魔化そうとしたから。私の家って、医者の家系なんだ。父も母もそう。兄もふたりいるんだけど、両方とも今有名な大学の医学部にいる」

「へえ……、そうなんだ。初めて知った」

「私も、夏以外に初めて言う。それがなんで藤原なんだろう……。まあ、とにかくね。そういう家系だと必然的に自分の将来も決められてしまうって思われがちだけど、私の場合はそうじゃなかった」

 それを幸運に思えればよかったのに。そう、ぽつりと言う。優秀な兄ふたりがいるおかげで、むしろ何も求められなかった。本当は、自分だって尊敬する家族と同じ道を進めたらいい。そう思っていたくせに、成績も上がらない自分などはなから両親の目にうつってなどいないのだ。