愛の歌、あるいは僕だけの星


「俺に何か求めるんだったら、他の捕まえとけよ。はっきり言うけど、迷惑だ」
 
 そこまで言えば、威勢のよかった声は流石に聞こえなくなって、代わりにすすり泣くような声が漏れ始めた。

『酷いよ、銀也。私には、あなたの相手は無理だったね。ごめん、終わりにさせて』

 呻くような声で、彼女が言った。
 今、自分はどんな顔をしているのだろう。ツーツーと一方的に切られたスマホを片手に、銀也は小さく口角をあげる。信じられないと目を瞬かせる如月が視界に入った。

「最初から最後まで、迷惑な女だな。如月もそう思わない?」

 笑いながら如月に問いかけたけれど、彼女は不機嫌そうに眉を寄せたまま答えようとしない。それに首を傾げた。

「なんだよ、如月のくせに無視すんの。ていうか、アンタ、幽霊のくせに俺に触れんの? スマホも手渡ししてきたけど……」

『……あたしが、触ろうと意識したものには触れるみたい。生きている人からの接触は出来ないけど』

「うわ……、とんでもない一方通行だな」

 幽霊ってそういう仕組みなのか。
 なんだか面白くなって、銀也はくすくすと笑いながらテレビをつけようとチャンネルに手を伸ばした。