『やっと出た! いつまでも無視してんじゃないわよ!!』
普段であればそのまま通話ボタンを切ってしまうところだけれど、現実らしい現実にどこかでホっとした銀也はそのまま彼女の声を聞く。スマホを手渡した当の如月は、何事かと目を丸くしていた。
「あァ、その声……(あれ、誰だっけ)」
『ねえ銀也。私、銀也と付き合ってるんだよね。それなのに、宮前さんとも関係持ったって本当? 嘘だよねえ』
切羽詰まった様子で銀也を問い詰める声音は、僅かに震えている。電話の向こうで、泣き叫ぶ彼女に自然と溜息が漏れた。ただでさえ、幽霊に憑りつかれて困っているのに、現実でもこんなことばかりで嫌になる。
「寝たかも。けど、なんでそれについてアンタにとやかく言われなきゃなんないの? 関係ねえじゃん」
『最低!! ほんとに、銀也、あなたって……』
「俺は、アンタの希望に沿っただけだけど。アンタが言ったんだよな。身体だけの関係でもいいから付き合ってって」
彼女が、きっぱりと放たれた銀也の言葉に、のどを詰まらせる。数秒の沈黙の後、だって、と絞り出すような声を漏らした。
『それは、……付き合って、銀也に好きになってもらえると思ったから』
(またか)
彼女の必死な弁解に、銀也は思い切り眉を寄せた。

