確かに、あの時の雰囲気は残っていた。けれど、それまでになかったはずのやわらかさが生まれていた。
 悔しい。どこの誰だ、藤原銀也を変えたのは。あれから半年も立っていないのに。

 似ていると、思ったのに。やっとお互いを理解しあえる相手に出会えたと思ったのに。ぎゅうと唇をかみしめる。これは、ある意味で裏切りだ。

 彼を変えるのは、亜矢子の役目であったはずなのに。悔しくて死にそうだけれど、こうなったら仕方がない。だったら、彼を落として手に入れたよう。何をしていても、亜矢子のことを思わずにはいられないくらいに、溺れさせてやろう。

 あの藤原銀也がそうなった時の騒ぎを想像するだけで、なんとか気が紛れそうだ。きっと、そう難しいことではない。藤原銀也を手に入れるのに、そう長い年月は必要ないと、その時は確信していた。