愛の歌、あるいは僕だけの星


『なんか悪いねー。無理言っちゃったみたいで』

 如月がわざとらしく両手を合わせて、わざとらしくぺこりと頭を下げる。銀也は、そんな彼女を前に深い溜息を吐いて肩を落とした。これは、完全に脅しである。

『実を言うとね。なぜだか分からないんだけど、藤原君にしかあたしのこと、見えないみたいなんだよね。藤原君て霊感とかあったの?』

「あるわけないだろ。生まれてこの方幽霊なんて見たことないし、そもそういうの信じてない」

『だよね。藤原君、UFOとかのロマンこれっぽっちも分からなそうだもんね』

「……その通りだけど、なんっかお前に言われると腹立つな」

 いきなり現れた元クラスメイトの幽霊に散々な言われようだ。そもそも、生前は殆ど接点もないようなものだったのに、今更ながら取り憑かれる理由が銀也にはさっぱり思いつかない。

(そりゃ、自分で言うのもなんだけど、結構モテるから女と遊んだことも多々あるし、恨まれていないと言ったら嘘になるけど……)

 ちらりと如月を見る。今時の女子高生に珍しく、一度も染めたことのない黒髪。顔立ちはよく見ればなかなか愛嬌があって可愛らしいとは思うけれど、化粧っ気がなくて垢抜けない。