愛の歌、あるいは僕だけの星


『ああ、ちょっと身体使わせてもらったわ。流石にあんな人気のない道路に放置したらやばいでしょ。あんた、一応美少年だし、貞操の危機がね。御礼なら別にいいよ』

「人の思考を読むな!……ていうか、今なんて……」

 にこりと笑う如月に、幽霊であるという事実以上に得体の知れない恐怖を覚えた瞬間だった。

 そうして、半透明のまま部屋でくつろぎ一向に出て行く様子を見せない如月に、徐々に苛立ちが積もっていく。落ち着かないったらない。

「……だああっ!いい加減にしろ!大体、何で俺に取り憑くんだよっ!」

 ついに我慢の限界で声を上げれば、如月は明らさまに途方に暮れた顔を銀也へと向けた。うっと、たじろぐ銀也を『意地悪だ』と避難した。性格が悪いのは自覚しているけれど、突然押し掛けてきた幽霊にそんなこと言われる筋合いはない。理不尽もいいところだ。

『出来るもんならとっくにしてるよ。けど、……成仏出来ないんだもん。仕方なくない?』

「はあ?」

『なにか、やり残したことがあるはずだったんだけど。なんだっけ?』

「俺が知るわけないだろ!お願いだから、さっさと思い出せよ!」

 現世に未練があって成仏出来ないなんて、そんなベタな。
 まだまだ、幽霊という存在をすんなり受け入れたくないという気持ちもあったけれど、今はそんなことを言っている場合ではなかった。

 このままでは、完全に取り憑かれる。

「ああ、はいはい。じゃあ頑張って成仏しなよ。けど、活動拠点をここにすんのだけはやめてよね。他にもあるだろ、取り憑く人や場所なんて」

 薄気味悪い。
 面倒事なんてごめんだ。

 如月は、そんな銀也の言葉に頬を膨らませる。そして、終いにとんでもないことを言い放ったのだ。

『ひっどーい!呪ってやる!!』

 うらめしや、と抗議の声と共に部屋の電気がぷつりと切れた。