愛の歌、あるいは僕だけの星



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 つうと頬を流れた汗を、手の甲でぐいと拭う。小さく息をついて、ゆっくりと教室へ戻った。途中で、部活へと向かうクラスメイトの何人かとすれ違う。この学校では、委員会か部活のどちらかに所属しなければならないルールがあるから、生徒は放課後も何かと忙しいのだ。

 教室は、すでにシンと静まりかえっている。日直当番が鍵を閉め忘れたのか、半分開いた窓から風が吹き込み、クリーム色のカーテンがはためいていた。時折、隙間から漏れる光が、如月の席に置かれた藍色のガラスをすり抜けて、机に藍色をうつしている。

 それを目にすると、無性に胸が苦しくなった。おもむろに花瓶を手にとり、廊下にある水道で中の水を換える。中のぬめりをさっと洗い、綺麗に活け直せば、なんだかきらきらとして見違えるようだ。

 両手で抱えたそれを、そっと見下ろす。そして、何を思ったのかそっと、自分の隣の席へと置いてみる。そういえば、如月とはクラスで隣同士の席になったこと、なかったっけ。銀也は、小さく微笑んだ。