如月と授業をサボった後に三原と教室へ戻った。
 早々に、目敏いクラスメイト達が、どうしてふたりで戻ってきたんだとひそひそ話をしたり、言葉にせずとも不躾な視線を送ったりするのにうんざりする。

 少し前であれば、興味ないの一言で一蹴出来ていたはずなのに、こんな些細なことで銀也は自分でも不思議なくらい苛々とした。不可解な感情の理由も分からず、とにかく必死に意識の外へ追い出そうと無心に教科書の文字を目で追う。
 いつもだったら、開始まもなくうつらうつらとし始める銀也なのに、今日は随分熱心に授業を受けている。あしたは槍が降るな、と聞こえよがしに皮肉を言う担任に、銀也は小さく眉を寄せた。

 最後の一コマとホームルームを終え、ようやく帰れると顔を上げる。机の横に掛けていた鞄を手に取り、中から財布を取り出した。そっと開き、こっそりと中身を確認する。
 三千円と、小銭がすこし。これだけあれば充分だろう。小さくうなずいて鞄へと突っ込んだ、そのときだった。