愛の歌、あるいは僕だけの星


「教室のあるここが、東棟。職員室は二階の渡り廊下を通って、西棟の一階にある」

「……誠東学園って、本当に敷地広いのね。覚えるまで、時間掛かっちゃいそうだなあ」

「これから毎日通うんだし、少しずつ覚えられるとは思うけど。分からなかったらいつでも聞いて」

「ありがとう、藤原君」

 うれしそうに微笑む三原を、あらためて観察する。背丈は、銀也の肩よりもさらに低い。ぱっちりとした二重に、茶色がかった大きな瞳。色白の肌に馴染むような柔らかな茶髪。クラスメイトがああも大袈裟に騒ぐくらいだ。確かに可愛いなと銀也も思う。

 上から下まで視線でなぞっていれば、真横で如月がぼそりと呟いた。

『えろおやじ』

「っ!」

 思わず声を上げそうになるのを必死に口で押さえた。三原が、そんな銀也を不思議そうに見上げる。

「藤原君?どうかした?」

「や、なんでも……。ていうか、三原さん」

「亜矢子でいいよ。みんなと早く仲良くなりたいし」

「……ほんとに職員室に用事あったの?」

 三原は、銀也の問いにただでさえ大きな瞳を、さらに見開く。そして、少し困った表情をして銀也に向かって小さく頭を下げた。