このやろう。
眉間にしわを寄せながらも、ぐるぐると動かしていれば、次第にオリーブの青々とした香りと玉葱の甘い匂いが湯気と共にあがってくる。初めて嗅ぐにおいだけれど、食欲も刺激される。
玉葱がしんなりとしてきた頃を見計らって鶏肉を入れ、火が通った頃に残りの野菜を入れて手早く炒める。ケチャップを混ぜ合わせれば、甘酸っぱい良い香りが部屋いっぱいに広がった。
ぱち、ぱち、時折立てる小気味良い音。彩り豊かなケチャップソース。炊いておいたご飯を混ぜ合わせて出来上がったケチャップライスに、思わず、ほうと溜息をつく。すると斜め下から、
『もうちょっとだから、頑張ってね』
にこりと、目元を和らげて微笑む如月の柔らかな視線にどきりと、心臓が大きく脈打った。何となく、不意に見せる彼女のこういった類の表情が苦手だ。胸がざわついて、心音がおかしく乱れて波打つから。
『ここからが、一番肝心の卵の出番。割った卵に塩と胡椒を少々、すこしだけオリーブオイル、それにマヨネーズを入れてよく混ぜる』
油を引き直して、火力を強める。後は焼くだけ。柄にもなく、少し緊張する。昔、家庭科の授業で一度実習したことを思い出してイメージトレーニングをしてみる。
熱せられたフライパンへ、溶いた卵を一気に流し入れた。一面に広がっていく薄黄色は、満月みたいだ。すかさず、菜箸で手早くかき混ぜる。

