昔々、あるトコロに母親と息子で二人暮らしをしている親子が居ったそうな…

この親子は『何処にでも居る平凡な親子』では無く『何処かに居そうな散々な親子』だそうな…

『散々な親子』と言っても母親には全く関係はない…いや『関係ない』とは言っても『親子』であるから其処が問題かも知れないそうな…

この母親は約50年間抱いて来た大きな悩み、苦しみ、憤りがあったそうな…

ソレは息子のコトだそうな…

この息子は物心が付いた頃から現在に至るまで善悪の区別が無い蒙昧な男で誰の言うコトも聞かない、受け入れない、理解しない、考えない、感謝しない、謝らない、そのうえ誇大妄想全開の自分勝手で我儘な人間に育ってしまったそうな…

そんな誰の言うコトも聞かない人間なのだから、唯一、血の繋がりがある母親の言うコトも全く聞くワケが無く、今まで何度も何度も、何年も、何十年も息子を諭し苦言を呈してきたが、全ては馬の耳に念仏、無駄な努力に終わったそうな…

母親は、そんな愚図息子が、この先、世間様で生きて行けるだろうか…この先、一人で生きて行けるだろうか…と酷く悩んでいたそうな…

ソンナコンナで月日が過ぎ行く中で母親は重い病気を患ってしまったそうな…

母親は自分の命が尽きた時は「『山』へ葬ってほしい」と願っていたそうな…

だから、母親は自分の命が尽きる瞬間に「息子や…あたしが死んだら『川』へ葬っておくれ…」と言い残しこの世を去ったそうな…

全く言うコトを聞かない息子のコトだから、こう言い残せば「あたしが言った『川』とは逆の『山』へ葬ってくれるだろう」と考えた苦肉の策だったそうな…

だが、しかし…

息子は母親の遺言通りに彼女の遺体を『川』へ葬ったそうな…