「あら、久しぶり。」
真っ黒な場所で浮かぶ僕の後ろから、聞き覚えのない少女の声が聞こえる。
「会いたかったよ、アリス。」
「アリスって女だったよな?僕は男だ。アリスなんかじゃない。」
アリスの話はよく知らない。知ってることは、白うさぎとチェシャ猫が出てくるということくらいかな。
「不思議な世界に迷い込んだんだから、あなたはアリスだよ。」
無茶苦茶だ。その理屈だと寝ている人の大半がアリスになる気がするが。
「ところでアリス、あなたはここがどこだかわかる?」
「もうアリスでいいよ。」
呼び名については諦めることにした。ここがどこか。それを知るために、辺りを見渡すと、



いつの間にか真っ黒な世界は森の中に変わっていた。