君の涙を拭うのは



『食べないの?』


フォークを握ってはいるが、
どこか躊躇ってる様に見える。


「あ、食べるよ!うん、美味しい!」


一口食べて「美味しい!」と笑う君は、
どこか無理をしている感じがした。


『…琉月ちゃん、チョコ苦手?』


「え……そんな事…。」


「そーいえば、
今迄チョコ食べてる所見た事ないかも。」


「そうなの?
じゃあ、なんでガトーショコラを?」


チョコが苦手ならわざわざ頼まないよな。


「少し考え事してて…適当に言っちゃったの。」


申し訳なさそうにフォークを置き、
しょんぼりしてしまった。


『そっか、じゃあ俺に頂戴?

それなら食べられそうだし、
俺が奢るから他の選びに行こ。』


ケーキを俺の方に寄せて、一口食べる。

初めて食べたそのケーキは甘過ぎず、
ほろ苦い味だった。