君の涙を拭うのは



『悩んでんなら話聞くぞ。』


「別に。

今日の晩ご飯は何かな〜って
考えてたらボールが目の前にあっただけ。」


我ながら馬鹿げた嘘をつく。


『どんだけ腹減ってんだよ?』


「うっさいな!
良いから監督さんは戻んなさいよ!!

待ってる奴らが居んでしょ!」


コイツだって本当は仲間と一緒に
コートで走り回って、
汗をかきながらシュートを決めたい筈。

それなのに声出して指示出してる時、
表情が活き活きして見えた。


『わーったよ。
完全に止まるまで動き回んなよ?』


「はいはい!」


笑って体育館に戻る怜央の背中を
無意識に目で追ってしまう。


「…琉月に見られてなきゃ良いけど。」


彼氏が他の女と一緒に居たなんて
見たくないもんね?


ズキ…


自分で考えて何故か胸が傷んだ。


豊sideEND