なみだシズク。

「……ま、とにかく早く足見せろよ。腫れてきたらヤベぇから。」


相沢くんが手招きする。


しかし歩けない。


仕方ないのでケンケンで進む。


相沢くんのもとへたどり着くと、手前のイスに座るようにうながされた。


その通り座ると、相沢くんは私の足元にかがみこんだ。


「わりぃな、俺のせいで怪我させて。」


私の足をとり、上履きをそっと脱がせながら 相沢くんは言った。


「ううん…私が見ちゃいけないものが、書いてあったんでしょう?もういいよ、気にしてないし。」


「……あれは、玲奈は見ないほうがいいと思ったんだ。…でも、結果的に怪我させたのは俺だし。ごめんな。」


相沢くんが私の靴下を脱がしはじめた。


「…うん」


相沢くんの優しい手つきが、なんだか少しくすぐったい。


恥ずかしくなり、なんとなく横を向く。


すると、すぐそばのテーブルに さっき私の靴箱に入っていた紙切れが、無防備に置かれているのが見えた。


相沢くんが、保健室に入った時、何の気なしに置いたんだろう。


…気になる。

内容が、すごく気になる。


そっと足元をみると、相沢くんは私の足の手当てに夢中で、

テーブルの紙切れのことなんて忘れているようだ。


…これは、チャンス?


気づかれないよう、細心の注意をはらいながら 紙切れに手を伸ばす。


そしてやっと、紙切れをつかんだ。


音を立てないように そっと持ち上げる。


ここからが肝心だ。

なにせ、相沢くんが少し目線を上にすればすぐ気付かれてしまう距離なのだ。

そーっと、そーっと手を移動させる。

あともう少しで、私の元に来る。


その瞬間、ふと、相沢くんが私を見上げた。


驚いて、持っていた紙切れをブレザーのポケットに勢いよく突っ込む。