なみだシズク。


なによその半笑いは。

バカにしてんの?


私はそっぽを向く。


「く、くじいてなんかー…」


「強がんなって。」


そう言うと、彼は私を抱き上げた。


…いわゆる、お姫様抱っこ。


い、いくらなんでもこれは…っ


廊下に、女の子達の悲鳴と男の子達の歓声が響き渡る。


だけど、そんな声など聞こえてもいないかのように、彼は普通に歩き出した。


「ち、ちょっと!!早く下ろしてくださ…」


「ケガ人は大人しくしてろ、バカ野郎。」


彼はそれだけ言って、フッと笑うと前を向いて保健室に向かった。




「バカ野郎とか…言い返したかっただけなんじゃないの?」


彼…相沢 翔馬(あいざわ しょうま)の優しさに、

少し胸が高鳴ったことには気付かないフリをして、

私はボソッとつぶやいた。