歩き出した彼について行こうと、私も歩き出す。


「あ。」


思わず漏れた私の声に、彼はピタッと立ち止まる。


「どした?」


顔だけ振り返ってくる。


私は、2本の桜の木の間を指差した。


「春に あそこで好きな人に告白すると、桜の木が恋を叶えてくれる。…って、言います…よね……」


言っていると、なんだか少し恥ずかしくなってきて、

語尾がしりすぼみになっていった。


恋が叶うってなんだ。


ジンクスとか 占いとかそういうの信じてる女の子みたいになっちゃったじゃん。


照れ笑いしながら彼を見ると、

彼は大きく目を見開いて私のほうを見ていた。


「そ、それ、誰から聞いた?」


彼は焦ったように、私の肩を掴む勢いで聞いてくる。



「え、えー…っと…あれ…?」


今思えば…


あんなジンクス、なんで私 知ってたんだろう…


誰かに聞いた覚えもないし……



考えれば考えるほど不思議に思えたが、

きっと通りすがりに誰かの会話が耳に入ったんだろう

ということにしておいた。