階段を、足を引きずりながらのぼっていく。


もう、とっくにチャイムは鳴っているはず。


「はぁ…新学期早々 遅刻とか……」


あいつのせいだ……っ


相沢 翔馬め……




実は昨日、春休みが終わっての始業式だったのだ。


つまり、私は昨日、高校2年になった。


そして…彼、相沢くんと出会った。


クラス替えで私と隣のクラスになったらしく、始業式が終わってから話しかけてきたのだ。


始業式で並んでいた時から、なんかすっごいイケメンがいるな、とは思っていたけど、

話しかけられるとは思ってもみなかった。



ー川原 玲奈ちゃん、だよね?ー



いきなりそう言って、愛想良く笑った彼。



緊張しすぎて、一緒にいた 親友のゆうちゃんの腕を 知らぬ間に強くギュッと握ってしまっていた。


それを見て、また彼は笑うのだ。


ーそんな緊張しないでよ。俺、相沢 翔馬。覚えといて?ー



2本の桜の木をバックにして、
ズボンのポケットに両手をつっこみ、優しそうに笑っている。

風が吹き、彼の茶髪がサラサラとなびく。


こんな風に見つめられて、ときめかない女子はいないと思う。



「……かっこいい。」



無意識に、口から漏れた言葉。


それは、風にかき消されて彼に届くことはなかった。