なみだシズク。


「…なにしてんの?」


怪訝そうに眉をひそめる相沢くん。


「え、えーっと………あはは、」


愛想笑いを浮かべる。


背中に冷や汗が流れる。


「ス、スマホがちょっと……」


「スマホ?」


疑惑の目で見つめてくる。


無言の見つめ合い。



しばらくすると相沢くんは、まぁいいけど。と、まだ少し不審そうにしながらも口を開く。



「手当て終わったけど。もう大丈夫か?」


あ、それで急に上を向いてきたのか。

てか、あれ?…もしかして、紙切れ取ったのバレてない?


じっと相沢くんを見つめると、彼はなぜか少し頬を赤く染めた。


「…んだよ。」



「いや、別に…?」



どうしたの、急に赤くなったりして…


でもまあ、気付かれていないのなら好都合だ。


バレないうちに、ここから出よう。


私はバッと立ち上がる。


急に立ち上がった私に、相沢くんは目を丸くする。


「ほ、ほら!相沢くんのおかげでこの通りだよ!!ありがとう!!…だから……バイバイッ」


早口でまくしたてると、返事も待たずに踵を返す。


「お、おい、玲奈ー」


引き止める相沢くんの声も聞こえないフリをして、

本当はまだ痛む足にも気付かないフリをして、

私は足早に保健室を出て行った。