「おはよ、怜奈。」
「…!! …お、おはよう、ございます…」
ポン、と突然肩を叩かれ、見知った顔が私の顔を覗き込んでくる。
反射的に、スーッと視線をずらす。
そんな私の行動に、彼は フッと笑うと、私の隣に並んで歩き出した。
着崩した制服。
明るい茶色の髪が、春の風にサラサラとなびいている。
そこから覗くピアス。
そーいうのは うといので、詳しくはよく分からないけど
赤いキラキラした、綺麗なものがはめ込まれてある。
そして、その赤いキラキラは彼のとても整った顔に、よく似合っていた。
「…ん?どうかした?」
私の視線に気付き、彼はニコニコと私を見つめ返してくる。
「い、いえ……」
焦った私は素っ気なく言うと前を向いた。
なぜか、彼に見つめられると 少し心がモヤッとするのだ。
「今日から2年生だな。」
「…ですね。」
前を向いたまま答える。
ここで会話終了かと思いきや、
「あ、そーいえば筆箱忘れたんだよ。」
まだ喋りかけてくる。
「そうですか。お気の毒に。」
「怜奈に借りたい。」
はい?なんで私…??
思わず、彼のにこやかな顔を見つめ返す。
「…なんでですか?」
なんでそこまで執着してくるんだ。
彼は少し目を泳がせてから、しばらくの沈黙の後に、
「…………まぁ、色々と。」
急に元気を無くしたかのように そう呟くと、彼は顔を背けた。