高校2年が始まって約2ヶ月。坂田雛(あさだひな)、ストレートな黒髪、身長はそれほど高くもないし、特に可愛いとかそういうのもなくてどこにでも居るような女子高生だと思う。
こんな中途半端な時期に転校生がやって来た。
「神谷月牙(かみやつかさ)です、生まれは大阪なんで関西弁が基本やからようわからへんこと言うてる時あるかもしやんけど、そんな時は気軽に聞いたってください。宜しく!」
凄い強烈な関西弁な関西弁とともに神谷くんはにこっと微笑んで見せた。
女の子が惹かれるような人懐っこい笑顔と、長身で軽く茶色く染まったサラサラな髪を片手でくしゃっとして微笑む神谷くんはまるで例えるなら王子様のようだった。
「よし、席は....。」
先生がそう言った瞬間、クラス中の女子の目が一気に集まる。皆んなイケメン好きだもんね〜。
....確かに、神谷くんの隣になれたら嬉しいかもだけど隣になったりしたらクラス中の女子の怒りを買うよね。
それだけは勘弁。
そう思っていたのに神様は意地悪だと思う、本当に......。
_______
「雛いいなあ〜!!羨ましい、あの神谷くんが隣とか今年の運もう使い切ったよね絶対!」
興奮気味に前のめりになって話しかけてくるこの女の子、私の親友。
栗林悠里(くりばやしゆうり)、同い年で小学校の時から一緒の親友。身長は平均的で笑うと笑窪ができて栗色に染められて少しカールがかかった髪が悠里を更に引き立てている。
隣でわーわー言う悠里に
「もう!うるさい!悠里と喋ってる時間ないの!」
と大声で軽く怒鳴ってさっさと教室を出る。
なんたって今日は神谷くんの歓迎会なんだから、クラス全員強制参加。
隣の席になったことでクラスの女子からは睨まれたりしたからただでさえ行きたくないのに、最悪。
それにまだ神谷くんと一言も話してないんだから!
ホームルーム後からずっと神谷くんはクラスの女子から質問攻めでとてもじゃないけど隣の席でも話しかけれるような状態じゃなかった。
はあ、本当に行きたくない.....憂鬱だ。
この時は神谷くんが隣になったせいで凄く憂鬱だった、憂鬱でしかなかった。
なのにどこかワクワクしている自分もいたことに私はまだ気づいていない。
「さあ、行きますかっ!!」
私の少し前を歩いて振り返り、楽しみを抑えきれていない笑顔を見せる悠里。
「.....はいはい。」
重い足取りで悠里とともに駅前のカラオケまで向かうのだった。