「好きです。付き合ってください」




告白はLINEじゃなくて、直接する。

それは晴翔のことを好きになって、ずっと心に決めておいたものだ。


こんなチャンスを掴めたのだ。
我ながら忘れ物を取りに来た晴翔を追ってきて正解だったと思う。





窓の外から聞こえる吹奏楽部の名前は分からない楽器の音。

運動部が外を走る音と、それに伴って出している掛け声。

廊下のずっと奥の方で喋っているであろう女子生徒の喋り声。



音、音、音。



オレンジ色の夕日が射し込む2人きりの放課後の教室は、全ての音が反響しているように思えた。


また、そんなくらりとするくらいの緊張と無言のこの空気が心地よいものにも思えた。





晴翔は、取りに来たプリントを机の上にそっと置いて、わたしを見た。



晴翔が唾を飲み込む音が聞こえた。


そして、



「いいよ」



晴翔はそう言って、"音" を発した。