貴方と月と、少しの勇気と。



屋上はやっぱり開いていた。
普段は来るものを拒むように閉じられた扉が、わずかにあいていた。


本当は入ってはいけないかもしれない。
それでも屋上が気になって、ドキドキしながら外へ足を踏み入れた。


瞬間、秋の優しい風が吹いてくる。そこはコンクリートでできた味気のない屋上だったけど、眺めは凄く良い。


でもやっぱり生徒は立ち入り禁止みたいで、つける必要が無いからか自殺防止の柵がついていない。


「んん……」


大きく伸びをすると清々しい空気が肺いっぱいに流れてくる。


屋上を見渡す。と、2mくらいある台に見た事のあるような不思議な機械が置いてあった。
台にはハシゴがかかっているから、何かの目的でここを使っているのかもしれない。


私は何となく上に行きたくなってみて、ハシゴをよじ登ってみた。


柵も何もないから、下を覗くと身震いしてしまう。
同時に、まるで空に自分が浮いている気分でとても気持ちいい。


もうみんなはお昼を食べているのかな。

いつも食べるのは一人だし、一人で食べるのもつまらないし、予鈴がなるまでここにいようかな。

そんな事を考えている時だった。




「お前何やってんの!?」