貴方と月と、少しの勇気と。



「相沢ぁー、黒板消してー」


音楽の授業が終わって、音楽室から出ようとしたところ先生から引き止められた。

私はよく黒板消しやチョークの入れ替えを頼まれる。少しでも頼られていると思うと嬉しい。

次はお昼の時間だから、ゆっくりと黒板を消せる。
そして黒板いっぱいに書かれた文字を丁寧に消し、教室を見渡すと、もう誰もいなかった。先生も忙しいのかどこかへ行ったみたい。


とりあえず窓閉めをすると、私は音楽室をあとにした。

最近塗り替えられたらしい綺麗な壁を見つつ、私は階段へと赴く。


その時、風がびゅうっと顔いっぱいに広がった。

私ははて、と首を傾げる。

おかしい、階段の上の方から風が来た。

音楽室は芸術棟の3階にある。

上は屋上になっていて、基本開放はされていないはずだけど……。


疑問に思いつつどうしても気になって、そのまま私は階段を上がっていった。