貴方と月と、少しの勇気と。



「おい、やめとけ」


体をグラグラと揺さぶられた時、そう言ったのは深谷君だった。

自由になる体。
助けてくれたのだろうか、と深谷君を見上げる。深谷君は口の端を釣り上げて顔を見下ろしていた。


「そんな事すんなよ相沢。醜い奴が醜い事したら目ぇ腐るから」


クク、と楽しそうに喉を鳴らす深谷君。やがて女子達と笑いながら去っていった。

私はその背中を感情無くぼうっと見つめる。
そして一つ咳をすると、何事も無かったかのようにまた歩き出した。