貴方と月と、少しの勇気と。



そしてお昼時間になって、今度こそちゃんとしたお弁当を持って教室を出た。
その時に深谷君と目が合ったけど、今日は何も言われることは無かった。


そして、屋上につく。

いつも通り吉田さんが座っていると思ったけど、今日は少し違っていた。


「あっ、来た!」


扉を開いて秋の風を顔いっぱいに受けるのと同時に聞こえてくる、明るい声。

見ると、吉田さんの隣に黒髪の男の人が足を伸ばして座っている。


……誰だろう。


どうしていいか分からずに立ち止まっていると、吉田さんがこちらに気づいて手招きしてくれた。男の人のほうもこちらを見てニコニコしている。


「わりぃ。屋上行こうとしたらこいつに捕まってついてこられた」


近づくと、男の人を横目に見ながらムスッとして吉田さんが言った。
私もつられてその人を見る。かなり制服を着崩していて、ネクタイもしてないから学年が分からない。ただ吉田さんと対してケラケラと笑っている。



「あ、僕、1年の原健太(はらけんた)でーす」

「相沢日向です」


ニコニコと微笑む原君。中性的な顔立ちだな、と思った。