貴方と月と、少しの勇気と。



そんな事を考えていると、机の上にバサッと数学の教科書とシャーペンが置かれた。


「ま、別にいいんだけどね!教えて欲しい問題あるんだ!」


それを聞いて私は耳を疑う。


「……え?私が、ですか?」

「日向ちゃんて毎回テストトップでしょ?」


天真爛漫に笑う女の子。

人に頼られるなんて、初めてだ。
嬉しいけど、私が教えられるかな。それに毎回トップというわけではない。

それでもお願いを無下に断る事も出来ず、私は言われた問題を教えることにした。


―――――――――――



「……なので、ここはX=2になります」

「おおー、ありがと!めっちゃ分かりやすい!」


パァアっと笑顔になる女の子。
一応、私の説明でわかってくれたようだ。ほっと胸をなでおろす。

その時機会を伺っていたかのようにチャイムが鳴った。


「あ、鳴った。またね、日向ちゃん!」


人懐っこい笑みで手を振ると、女の子は教室から出ていった。

……今更だけど、何であの子私の名前知っているんだろう?私はあの子と話した記憶はない。

私が一方的に忘れているだけだったらどうしよう。顔は見た事ある気がするし……と一抹の不安を覚えつつ、私は次の授業を受けた。