しおりちゃん、と声にだそうとした時、しおりちゃんの顔が悲哀に歪んだ。
その眼には、今にもこぼれそうな涙が浮かんでいる。
泣かないで。
そう言いたかったけど、言えなかった。
泣かせているのは、自分だから。
しおりちゃんが口を開いた。
『日向ちゃんなんか』
私ははっと息を飲んだ。
ザワ、と嫌な気持ちが渦巻く。
やめて、その先は言わないで。
『日向ちゃんなんか!』
しおりちゃんは自分の前髪からピンをとって、床に落とす。
その上に足を浮かせた。
やめて。何も、言わないで。
『大ッ嫌い!』
私が最後に見たのは、しおりちゃんから飛び散る涙と、振り下ろされる足だった。