自室に入ると、私はすぐさま携帯を取り出した。
数少ないアドレスの中から、『吉田誠』という文字を見つける。
赤外線というのは、電話番号や住所なども登録されるらしい。
私は電話番号の所を押した。
プルルル……という電子音。
ドキドキしながら待っていると、電話が通じた。
『もしもし?』
「申し訳ありませんでした」
『落ち着け』
耳元からする吉田さんの声が聞こえてくすぐったい。
勿論電話はした事があるけど、なんだか吉田さんの声はくすぐったい。
私はベッドに座り込んだ。
『え、何?どうしたんだよ』
「卵焼き、しょっぱくてごめんなさい」
見えるわけないけど、頭をぺこりと下げる。
吉田さんは何のことだかわかったようで、『ああ』と言った。
『別にいいよ。俺、甘いもんで舌が麻痺してるからそんな気になんねぇよ』
……それもそれで心配だ。