貴方と月と、少しの勇気と。



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「ただいま」


7時頃、私は学校から帰ると家のドアを開けた。

うちは共働きで一人っ子だから、家に帰っても基本誰もいない。それでもただいまと言いたくなる。

台所まで行くと、パチンと電気をつけた。

お母さんがいないから、夜ご飯は私が作る。
家で両親と顔を合わす事は朝くらいしか無いけれど、作り置きした夜ご飯が翌朝完食されているのを見ると嬉しい。

今日は何を作ろうかな、と思っていると、コンロの横に置いてある皿に目がいった。


「……あ、おかず残ってるんだった」


見ると、お皿の上にはいくつかのおかずが並んでいた。

その中で卵焼きに目が止まる。

そういえば吉田さんが卵焼き食べた後の様子が変だったな。

何かあったんだろうか、と思って私は卵焼きを口に入れた。


――その瞬間、思いっきりむせた。



「何これ……」



それは、殺す気かと言うほどしょっぱかった。