貴方と月と、少しの勇気と。



「……なあ、何かあっただろ。なんかいつも以上に暗い」


そんな私の様子に気付いたのか、吉田さんが顔をのぞき込んできた。顔が近くて一瞬ドキリとする。


「どうした?」


声を低くする吉田さん。

何でもない、と言おうと思った。けど、その声と表情が凄く優しくて、胸が苦しくなる。

隠し通すのは無理だ。
私は自分の後ろに隠しておいたお弁当を前に差し出した。


「……迷惑かもしれないんですけど、吉田さんに、お弁当を作ってきたんです。だけど……転んでしまって」


言いながら蓋を開くと、中に沢山入れていたからかそこまで酷い事にはなってなかった。どうやら私のは隙間が空いているからあんなにぐちゃぐちゃだったらしい。
とはいえ、吉田さんの物もおいしそうとお世辞でも言えたものではなかった。


「俺に……?」


吉田さんはお弁当をじっと見つめる。

私が彼はどんな反応をするか冷や冷やしていると、吉田さんは私の手からお弁当をすっと取った。