貴方と月と、少しの勇気と。



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私、なんて事を言ってしまったんだろう……

階段を登りながら、頭を抱える。

あの女の子、本当にただの軽い冗談かもしれなかったのに。
頭が冷えると感情的になりすぎたことを後悔する。

そもそもこのお弁当は単なる自己満足でしかない。それなのに女の子にも深谷君にも怒ってしまった。

後で謝ろう、と決心すると、屋上の扉の前に来た。


私は胸に抱えているお弁当に目を落とす。
……これ、どうしよう。勢いで二つ持ってきちゃったけど、こんなの渡すわけにはいかない。
来る途中にもお弁当を気にせず走って来た。いい具合にシェイクされてるからきっと混ぜご飯になってる。

とりあえず吉田さん用のは隠しておこう、と決めて私は屋上の扉を開いた。


「遅かったな」

「待たせてすいません。授業が長引いて……」


そっか、と納得する吉田さん。
先に食べていると思ってたけど、パンは何一つ開けられていない。
待っててくれた事が嬉しくて胸がぎゅうっとする。


「んじゃ。いただきまーす」

「いただきます」


私はお弁当を一個取り出して開ける。……やっぱり中は凄い事になっていた。

それを見てぎょっとしたのか、吉田さんが目を丸くする。


「何でそんな弁当寄ってんの?」


……やっぱり隠し通すのは無理があるよね。

私は最もらしい理由を考える。

本当のことを言おうか、と思ったけど、やめた。二人は同じ部活だから、深谷君のイメージを悪くするのは避けたい。

だけど、さっきのお弁当を落とされた事を思い出すと、やっぱり胸が痛くなる。