貴方と月と、少しの勇気と。



その瞬間、サッと嫌悪感が全身を走った。


「……やめて」

「えー?」

「やめてください」


声が震えた。
話すことに緊張してるのもあるけど、それ以上に何かがこみあげてくる。


初めて人の為に作った。

その言葉が本気かどうかは分からないけど、流石にいい気持ちはしなかった。

……私って、怒れたんだ。

私の言葉に、女の子は勿論、クラス中がざわめいている。
私自身でさえビックリしている。


でもたった一人、深谷君だけが嫌に無表情だった。

そして、女の子が持っていた包みを持ち上げて、


「生意気なんだよ」


――私の目の前で、落とした。

バコッと大きな音を立ててお弁当は床に叩きつけられる。
同時に、私の心も強い衝撃を受けた。

驚きのあまり一瞬フリーズする。


不幸中の幸いか、中身が飛び出す事は無かったものの、かなり高い位置から落ちた。きっと寄ってしまっているだろう。


「……なんで」


自然と口から出たのはそんな言葉。

私は深谷君を見上げた。悲しみで目の前が歪む。


「なんでそんな事するの……?」


初めて、心からの言葉を口にした。

深谷君が何か言った気がしたけど、私はお弁当を拾い上げると、教室を走り去った。