「あ、そーいえば今更だけど連絡先交換しよ」
ご飯を食べ終わると、吉田さんが携帯を取り出した。
因みに食べた後は予鈴が鳴るまでお話をするのが日課になっている。
連絡先交換、という言葉に私は嬉しさでいっぱいになる。お父さんとお母さん以外に連絡先なんて持ってない。
私は内ポケットから携帯を取り出した。
「赤外線でいいだろ?俺送信な」
「赤外線……?」
私が頭に疑問符を浮かべると、吉田さんは首をかしげる。
「やった事無いのか?」
「アドレス交換なんて初めてなので……」
言ってから、自分から友達いない宣言をしてしまった、と後悔する。
恥ずかしくなってうつむくと、吉田さんのクスッと笑う声が聞こえた。
「じゃ、俺が友達第一号か」
再び上を向くと、吉田さんが少年のような笑みを浮かべていた。
その笑顔を見て、胸がドキンとする。なんだか苦しいような、くすぐったいような……心臓をつかまれる感じ。
最近、こういう事がよくある。運動不足過ぎて動悸が急にし始めるのかな。
そうして、吉田さんに教わりながらアドレスの交換をする。
と、私の携帯に『吉田誠』という文字が映った。
「……ふふ」
「何笑ってんだよ?」
「嬉しくて……ありがとうございます」
ギュウッと携帯を握り締める。
吉田さんは目を細めると、「おう」と短く返事をした。
